精密ガラスの研磨排水が沈まないとき、凝集剤の量だけを増やしても改善しないことがあります。研磨材やガラス粉は粒径が細かく、分散剤や洗浄剤が粒子を安定化させている場合があるためです。
改善には、①排水の発生条件を分ける、②pHと凝集剤の組み合わせを実排水で試す、③撹拌・沈降・汚泥引抜きを含む実機条件を確認する、という順序が有効です。SSが下がっても溶解性成分が残ればCODは下がらないため、指標ごとに処理目標を分けます。
ガラス研磨排水の特徴
研磨工程では、ガラス由来の微粒子、研磨材、加工液、分散剤、洗浄剤などが排水へ入ります。製品材質や研磨材によって、シリカ系、セリウム系など含有物が変わります。
微細粒子は長時間浮遊しやすく、見た目が白濁していても通常の沈降だけでは分離できない場合があります。また、洗浄剤などの有機成分は水に溶けたまま残り、凝集でSSを除去してもCOD低減が小さいことがあります。
原因1.粒子が細かく、表面電荷で分散している
微粒子同士が反発していると、自然には大きなフロックになりません。無機凝集剤で電荷を中和し、高分子凝集剤で架橋する方法が候補ですが、原水に合わない種類・量では逆に再分散することがあります。
確認する項目は、濁度、SS、粒径、ゼータ電位(必要な場合)、凝集前後の上澄みです。薬品使用量だけでなく、除去した固形物量当たりの薬品量で評価します。
原因2.pHが凝集に適した範囲から外れている
凝集剤の働きや粒子表面の状態はpHで変わります。製品切替や洗浄によりpHが変動すると、昨日まで安定していた条件でフロックができなくなることがあります。
原水pHを測り、複数のpH条件でジャーテストを行います。強酸・強アルカリの排水は発生源で分け、均等化槽へ急激に流入させない運用も検討します。
原因3.分散剤・界面活性剤が凝集を妨げている
研磨液や洗浄液に含まれる分散剤・界面活性剤は、粒子を安定して分散させる目的で使われます。そのため、凝集処理とは反対に働くことがあります。
使用薬剤の種類、投入量、洗浄頻度を記録し、通常研磨排水と設備洗浄排水を分けて採水します。高濃度の初期洗浄水だけを別槽へ受け、定量で処理する方が安定する場合があります。
原因4.流量・濃度のピークを均等化できていない
平均日量に余裕があっても、バッチ排水が短時間に流入すると、pH調整や薬注が追従できません。沈殿槽で必要な滞留時間も確保できなくなります。
流量と濁度・pHを時間軸で記録し、ピーク時の槽容量と薬注能力を確認します。均等化槽の撹拌不足で底部に粒子がたまり、後から高濃度水が流出するケースにも注意します。
原因5.フロックはできても沈殿槽で分離できない
ビーカーでは沈んでも、実機では細かく砕けることがあります。急速撹拌、緩速撹拌、配管内せん断、越流負荷、掻寄せ、汚泥引抜きの条件を確認します。
| 症状 | 主な確認ポイント |
|---|---|
| フロックができない | pH、凝集剤の種類、分散剤、原水濃度 |
| フロックが細かい | 高分子凝集剤、緩速撹拌、添加順序 |
| できたフロックが崩れる | 撹拌過多、ポンプ・配管のせん断 |
| 沈むが上澄みが濁る | 微細粒子、越流負荷、汚泥巻き上げ |
| 沈降が遅い | フロック密度、薬品過剰、槽条件 |
ジャーテストで確認する条件
実排水を使い、次の条件をマトリクスで比較します。
- pH
- 無機凝集剤の種類と添加量
- 高分子凝集剤の種類と添加量
- 添加順序
- 急速・緩速撹拌の強さと時間
- 沈降時間
- 上澄みのSS、濁度、COD、色度
- 発生汚泥量と脱水性
見た目の透明度だけでなく、規制・社内基準の分析項目で評価します。自治体の上乗せ基準や下水道への排除基準があるため、適用条件は所管行政・下水道管理者へ確認してください。
凝集でCODが下がらない場合
粒子状の有機物は凝集で除去できても、水に溶けた有機成分は残ります。ろ過後のCODを測り、溶解性CODの割合を把握します。
残留成分に応じて、活性炭、生物処理、酸化、膜処理などを検討します。最初から高度処理を選ぶのではなく、実液試験で除去性、薬品・電力、濃縮水・汚泥を比較します。
よくある質問
Q1.PACを増やせば沈みますか?
適量までは改善する場合がありますが、過剰添加はpH低下、汚泥増加、再分散につながることがあります。pHと高分子凝集剤を含めて試験します。
Q2.白濁が消えれば放流できますか?
見た目だけでは判断できません。SS、COD、pHなど、適用される排水基準・契約条件を分析します。
Q3.一度決めた薬注条件を固定できますか?
製品、研磨材、洗浄剤、流量が変われば最適条件も変わります。原水指標に応じた段階制御や、代表条件ごとのレシピ化を検討します。
Q4.試験にはどのくらいの排水が必要ですか?
試験項目によります。通常時、品種切替時、洗浄時など代表条件の排水を用意し、事前に必要量と保存条件を確認します。
実排水による処理試験から改善します
株式会社増澤技研では、排水の発生条件を確認し、実排水を用いた凝集・沈殿試験から、既設設備の運転改善や改造を検討します。
参考資料
- 「Analysis of infrared optical polishing effluents and reduction of COD and TSS levels by ultrafiltration and coagulation/flocculation」 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1944398624063239 (2026年9月10日確認)
- Chemosphere掲載「glass industry wastewater」に関する研究 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0045653520301582 (2026年9月10日確認)
- 環境省「一般排水基準」 https://www.env.go.jp/water/impure/haisui.html (2026年9月10日確認)
排水処理設備の新設・更新・基準超過対策は増澤技研へ
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