PACを入れても白く濁ったまま。フロックはできるが細かい。昨日は沈んだのに今日は沈まない――。水性塗料排水の凝集不良は、薬品量だけでは解決できません。

結論:pH→無機凝集剤→高分子→攪拌→原水の順に切り分ける

同時に複数条件を変えると、改善理由が分からなくなります。実排水を均一化し、1項目ずつ変えたジャーテストで比較します。

原因1:pHが反応範囲から外れている

pHは凝集剤の働きと塗料粒子の安定性に影響します。原水pHだけでなく、凝集剤添加後のpHも測定します。最適範囲は塗料・薬品・水質で異なります。

原因2:無機凝集剤が少なすぎる、または多すぎる

不足すれば粒子が不安定化せず、過剰でも微細化や汚泥増加を招く場合があります。添加量を段階的に振り、上澄みSS・CODと汚泥量を並べます。

原因3:高分子凝集剤の型や入れ方が合わない

イオン性、分子量、添加濃度、溶解時間が合わないと、大きなフロックになりません。希釈液を強く攪拌し過ぎたり、無機凝集剤と同じ位置へ入れたりすると、十分に働かないことがあります。

原因4:攪拌が強すぎる・弱すぎる

最初は薬品を素早く分散させ、その後はフロックを育てる穏やかな攪拌が必要です。強過ぎると形成後のフロックが壊れ、弱過ぎると薬品と原水が接触しません。

原因5:原水が変わっている

色替え、塗料メーカー・樹脂系統、洗浄作業、排水量で処理性は変わります。「薬品設定は同じ」でも、原水条件が同じとは限りません。

症状別の確認表

症状 主な確認候補
全く固まらない pH、薬品の種類・劣化、原水濃度
細かなフロックだけ 高分子の型・量、緩速攪拌
できた後に崩れる 過攪拌、ポンプせん断、滞留時間
沈まず浮く 比重、気泡、油分、浮上分離の適否
日ごとに変わる 色替え・洗浄記録、調整槽の均一化

現場で残す5つの記録

  1. 塗料名・色・使用量
  2. 排水量、pH、COD、SS
  3. 各薬品の添加量
  4. フロック形成・沈降時間
  5. 汚泥量と処理水の状態

よくある質問

Q1. 高分子を増やせばフロックは大きくなりますか?
A. 過剰添加で粘性や分離性が悪化する場合があります。段階試験で適正点を確認します。

Q2. ジャーテストでは沈むのに実機で沈みません。なぜですか?
A. 混合不足、流量変動、短絡流、ポンプせん断、汚泥引き抜き不足などを確認します。

Q3. 薬品を替える前に何を用意しますか?
A. 平常時・異常時の実排水、塗料情報、運転記録、現行薬品と添加条件をそろえます。

まとめ

凝集不良は、pH、薬品、攪拌、原水変動を順番に切り分けると原因を絞れます。フロックの見た目だけでなく、上澄みの分析値と汚泥性状まで比較してください。

凝集不良の実液診断

参考資料

  • Adnan Aldemirほか「Determination of optimum treatment conditions for paint industry wastewater with the coagulation/flocculation method」(2026-08-20確認) https://doi.org/10.5004/dwt.2021.26624
  • E. D. Şengülほか「Microfiltration of water-based paint effluents」(2026-08-20確認) https://doi.org/10.1016/S1093-0191(02)00122-3

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