処理水質を安定させようと凝集剤を増やした結果、汚泥の搬出回数と産廃費が増えていないでしょうか。水性塗料排水の汚泥には、塗料由来の固形分だけでなく、凝集剤由来の固形分と多量の水分が含まれます。
結論:汚泥は「乾燥固形分」と「水分」に分けて減らす
湿った脱水ケーキの重量だけを見ても、改善点は分かりません。
- 乾燥固形分を減らす:塗料流入量と過剰薬品を減らす
- 水分を減らす:濃縮・調質・脱水を改善する
この2軸で、処理水質を守りながら搬出重量を減らします。
汚泥が増える4つの原因
1. 塗料が排水系へ多く入っている
容器・ガン・配管・治具に残った塗料を、そのまま水洗すると汚泥の原料になります。回収、かき取り、拭き取りを先に行い、初期洗浄水を分けます。
2. 凝集剤を必要以上に入れている
凝集剤は水中の粒子を分離しやすくしますが、添加した薬品の一部も汚泥になります。CODが下がらない原因が溶解性成分なら、凝集剤増量だけでは効果が頭打ちです。
3. 凝集条件が悪く、脱水しにくい汚泥になっている
フロックが細かい、粘りが強い、ろ布を詰まらせる場合は、高分子の型・添加量、pH、攪拌条件を見直します。沈みやすさだけでなく、脱水試験まで行います。
4. 濃縮・脱水設備の能力が出ていない
薄い汚泥をそのままフィルタープレスへ送る、ろ布が目詰まりしている、圧入条件が合わないと、処理時間と含水率が増えます。
改善1:薬品添加量を実液試験で適正化する
ジャーテストでは、薬品量を段階的に変え、次を同時に測ります。
- 上澄みCOD・SS・色度・pH
- 沈降速度と界面の明瞭さ
- 汚泥容量
- ろ過時間とケーキ状態
最も透明な条件ではなく、要求水質を満たし、汚泥発生量と脱水性のバランスがよい条件を選びます。
改善2:排水量ではなく汚濁負荷で薬注する
一定量の薬品を常時入れる運転は、原水が薄い時間帯に過剰添加となりがちです。流量、pH、濁度などの監視値と作業予定を組み合わせ、原水負荷に合う運転範囲を作ります。
オンライン計器は便利ですが、塗料の色や気泡で測定が乱れることがあります。定期分析と手分析で相関を確認します。
改善3:汚泥を濃縮してから脱水する
重力濃縮や適切な滞留で、フィルタープレスへ送る汚泥濃度を高められれば、圧入回数や時間を減らせる場合があります。一方、長時間放置すると腐敗・固着・再分散が起こることもあります。汚泥性状に合わせて滞留時間を決めます。
改善4:フィルタープレスを最適化する
確認するのは、圧入圧力だけではありません。
- 圧入濃度と1回当たりの固形分量
- 圧入時間、締め付け、ろ液状態
- ろ布の材質・通気性・洗浄頻度
- ケーキ厚、含水率、剥離性
- ポンプ能力と配管閉塞
ろ液が濁る場合は、その返送によって処理系の負荷が循環していないかも確認します。
含水率改善の見方
乾燥固形分を月1tとすると、計算上の湿重量は次のとおりです。
| 含水率 | 湿重量 | 乾燥固形分 |
|---|---|---|
| 85% | 約6.67t | 1t |
| 80% | 5.00t | 1t |
| 75% | 4.00t | 1t |
含水率を5ポイント下げる効果は大きく見えることがあります。ただし、処分価格が重量制か、容器・回収単位か、最低料金があるかで実際の削減額は変わります。
産廃費は契約条件まで確認する
排水処理由来の汚泥は、性状によって産業廃棄物として適正処理が必要です。塗料成分に有害物質が含まれる場合は、分析と区分確認が欠かせません。処分委託後も、排出事業者として許可、契約、マニフェスト、最終処分までの適正性を確認します。
単価比較だけでなく、含水率条件、容器、回収頻度、分析費、運搬距離、契約区分をそろえて比較してください。
改善効果を追うKPI
- 汚泥湿重量 kg/処理水m³
- 乾燥固形分 kg/除去SS kg
- 凝集剤 kg/処理水m³
- ケーキ含水率
- 1サイクルの圧入・剥離時間
- 汚泥処理費 円/処理水m³
よくある質問
Q1. 凝集剤を減らせば必ず汚泥も減りますか?
A. 薬品由来分は減る可能性がありますが、固液分離が悪化すると逆効果です。処理水質と脱水性を同時に確認します。
Q2. 含水率はどう測りますか?
A. 同じ採取位置・時刻・方法で測り、分析機関または社内標準に沿って比較します。
Q3. 汚泥を有価物として再利用できますか?
A. 成分、品質の安定性、需要、法的区分を個別に確認する必要があります。安易に廃棄物区分を外せません。
Q4. 既設フィルタープレスの改善だけ相談できますか?
A. 可能です。汚泥性状、運転条件、ろ布、薬注、前段濃縮を一体で診断します。
まとめ
水性塗料排水の汚泥削減は、凝集剤を減らすだけの取り組みではありません。塗料を排水へ入れない、薬品を適正化する、脱水前に濃縮する、フィルタープレスで水分を落とす。この順で原単位を追うと、処理水質を守りながら産廃費を改善しやすくなります。
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参考資料
- 環境省「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」(2026-08-20確認) https://www.env.go.jp/content/000125692.pdf
- 環境省「排水処理・汚泥脱水技術一覧」(2026-08-20確認) https://www.env.go.jp/en/water/wq/ine/pdf/technology/Technologies%20List-jp.pdf
- Adnan Aldemirほか「Determination of optimum treatment conditions for paint industry wastewater with the coagulation/flocculation method」(2026-08-20確認) https://doi.org/10.5004/dwt.2021.26624
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