塗装ブース排水では、COD・SS・色度が同じ原因で上がっているとは限りません。顔料や塗料かすが流出すればSSと色度が上がり、樹脂・界面活性剤・洗浄剤などが水に溶けて残れば、SSが低くてもCODや色度が残る場合があります。

改善の近道は、3項目を一つの「汚れ」として扱わず、粒子状成分と溶解性成分、通常のブース循環水と洗浄・全量交換時の排水を分けて調べることです。

塗装ブース排水はどこから発生するか

水洗式塗装ブースでは、オーバースプレーした塗料を循環水で捕集します。循環中に塗料かす、顔料、樹脂、添加剤、ブース処理薬品が蓄積し、一部のブロー水や清掃排水として排出されます。

主な発生条件は次のとおりです。

  • 通常運転中のブロー・補給
  • 塗料かすの回収、槽底清掃
  • 色替え・品種切替
  • 循環槽の全量交換
  • ガン、配管、治具、床の洗浄

通常時の排水だけを分析すると、洗浄時の最大負荷を見落とすことがあります。

COD・SS・色度の違い

指標 主に表すもの 処理の考え方
SS 水中に浮遊する粒子 凝集・沈殿・浮上・ろ過
COD 酸化される有機物等の量 粒子状と溶解性を切り分ける
色度 水の着色の程度 顔料粒子と溶解性色素を分ける

ろ過前後のCOD・色度を比較すると、粒子を取れば下がる部分と、水に溶けて残る部分を推定できます。

原因1.オーバースプレーの回収が不十分

塗着効率が低い、ブース内の流れが偏る、塗料かす回収が遅れると、循環水へ入る負荷が増えます。排水設備だけでなく、塗装条件、ガン設定、風量、水流、かす回収頻度を確認します。

発生源で捕集量を減らせれば、薬品と汚泥の両方を抑えられます。

原因2.ブース循環水の管理が不安定

pH、電気伝導率、固形分、処理薬品、循環日数が変わると、塗料の粘着性や分離性が変化します。補給・ブローが固定時間だけで行われている場合、負荷に対して過不足が生じることがあります。

循環水の管理値と排水分析を同じ時系列で記録し、「いつから悪化したか」を追えるようにします。

原因3.洗浄・全量交換の高濃度排水が一気に流入する

槽清掃や配管洗浄では、通常時より高濃度の排水が短時間に出ます。均等化槽へ一度に入ると、pH調整と薬注が追従せず、沈殿槽の滞留時間も不足します。

初期洗浄水や槽底の濃厚液を別に受け、定量処理・回収・委託処分を比較します。後段すすぎ水と混ぜないことがポイントです。

原因4.凝集条件が塗料に合っていない

塗料の樹脂、顔料、界面活性剤、色が変わると、最適pHや凝集剤が変わります。PACなどの無機凝集剤と高分子凝集剤を、pH、添加順、撹拌条件を変えて試験します。

フロックの大きさだけでなく、上澄みのCOD・SS・色度、汚泥容積、脱水性を測ります。

原因5.溶解性COD・色度が残っている

凝集で顔料粒子を除去しても、水に溶けた樹脂、界面活性剤、有機成分、色素が残ることがあります。凝集剤を増やしても効果が頭打ちになる場合は、次段処理を検討します。

  • 活性炭:吸着性のある有機物や色度
  • 生物処理:生分解性の有機物
  • 酸化:対象成分を試験して適否を判断
  • 膜処理:微粒子・溶解成分の分離。ただし濃縮水が発生

いずれも実排水で除去率と維持費を確認します。

改善手順

  1. 発生条件別に排水量と水質を測る
  2. 塗料使用量・色替え・洗浄記録と照合する
  3. 高濃度排水を分離し、均等化を見直す
  4. ジャーテストで凝集条件を最適化する
  5. 沈殿・浮上・ろ過の実機能力を確認する
  6. ろ過前後で溶解性負荷を切り分ける
  7. 必要な場合だけ次段処理を選ぶ

現場チェックリスト

  • ブース循環水のpH・導電率・固形分を記録している
  • 塗料かすの回収量と頻度を把握している
  • 色替え・清掃排水を別に採水できる
  • 均等化槽に時間最大排水を受けられる
  • pH計を校正し、薬注量に上限がある
  • 凝集後の上澄みと汚泥を両方評価している
  • COD・SS・色度それぞれに管理値がある

よくある質問

Q1.SSが低ければCODも問題ありませんか?

そうとは限りません。溶解性の樹脂や洗浄剤が残れば、SSが低くてもCODは高くなります。

Q2.色が消えれば処理できていますか?

見た目だけでは判断できません。COD、SS、pH、対象物質など適用基準を分析します。

Q3.ブース水は頻繁に全量交換すべきですか?

一律ではありません。循環水の管理値、塗料かす回収、臭気・粘着性、処理能力を見て、部分ブローと全量交換の条件を決めます。

Q4.新しい色だけ処理できないのはなぜですか?

顔料だけでなく、樹脂・添加剤・塗料濃度が変わった可能性があります。色別の排水を採取し、同じ条件で比較します。

COD・SS・色度を分けて改善します

株式会社増澤技研では、塗装ブースの発生源調査、実排水による凝集試験、既設設備の運転・改造まで検討します。

参考資料

  • 環境省「一般排水基準」 https://www.env.go.jp/water/impure/haisui.html (2026年9月10日確認)
  • 環境省「排水処理技術事例」 https://www.env.go.jp/water/effluent_case/index.html (2026年9月10日確認)
  • 環境省「水質汚濁防止法関係資料」 https://www.env.go.jp/hourei/05/000136.html (2026年9月10日確認)

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