「凝集後の上澄みは透明なのに、CODを測ると高い」。この現象は、凝集処理が失敗したとは限りません。凝集で取れた成分と、CODとして水側に残った成分が違う可能性があります。
結論:SS除去とCOD除去を分け、凝集上澄みを次段処理の原水として評価する
顔料や塗料かすなどの粒子状成分は凝集で除去しやすい一方、溶解性・微細分散の樹脂、界面活性剤、添加剤などは水側へ残り得ます。CODが下がらないときは凝集剤を増やす前に、原水とろ過水、凝集上澄みのCODを比べて負荷の形を確かめます。
理由1:溶解性の樹脂・有機成分が残っている
水性塗料の樹脂は、粒子として分散する部分だけでなく、条件によって水側へ残る部分があります。凝集で粒子を沈めても、溶解性CODは上澄みに残ります。
対策は、ろ過前後のCODを測り、粒子性と溶解性の寄与を推定することです。残存負荷が多ければ、活性炭、生物処理、酸化処理、膜処理などの適用試験へ進みます。
理由2:界面活性剤や分散剤が凝集を妨げている
塗料中の粒子を安定して分散させる添加剤は、排水処理ではフロック形成を妨げる場合があります。薬品添加直後は濁りが消えても、細かな粒子が沈まず、CODや色度として残ることがあります。
pH、無機凝集剤の種類、高分子凝集剤の型、投入順、攪拌条件を変えたジャーテストで比較します。
理由3:測定対象と現場の評価が一致していない
「透明だから処理できた」「SSが低いからCODも低いはず」という判断は危険です。CODは見た目では判定できません。また、採水時刻、試料の均一化、分析前処理が違えば、日ごとの比較も難しくなります。
同じ採水地点・時間帯・分析方法で傾向を取り、特に洗浄排水が流入する時間を外さないようにします。
理由4:高濃度排水が一時的に流入している
通常運転中は問題がなくても、色替え、ガン・配管・治具洗浄、ブース清掃でCODが急上昇することがあります。調整槽が小さい、攪拌が不十分、投入が一括で行われると、凝集槽の設定範囲を外れます。
発生源ごとの分離、別受け、定量投入、調整槽容量と攪拌の見直しで、原水のピークを抑えます。
理由5:凝集剤の過剰添加で限界を超えている
凝集剤を増やしても、溶解性成分は必ずしも除去できません。過剰添加は薬品由来の負荷、微細フロック、汚泥増加、pH変動を招くことがあります。
薬品量とCOD除去率の関係をグラフ化し、改善が頭打ちになる点を確認します。最小薬品量ではなく、処理水質・汚泥・運転安定性を満たす適正点を選びます。
凝集後に検討する4つの処理
| 処理方式 | 主な役割 | 事前に確認すること |
|---|---|---|
| 活性炭吸着 | 溶解性有機物、色、臭気の低減 | 吸着容量、交換頻度、使用済み炭 |
| 生物処理 | 生分解可能な有機物の低減 | 生分解性、阻害性、負荷変動、栄養塩 |
| 酸化処理 | 難分解性成分の分解・改質 | 薬品・電力、安全性、副生成物 |
| 膜処理 | 微細粒子・溶解成分の分離、再利用水の仕上げ | ファウリング、前処理、濃縮水 |
水性塗料排水を対象とした研究では、凝集に酸化や膜を組み合わせた処理・再利用が検討されています。ただし、研究で得られた除去率や薬品条件は、その試料・装置での結果です。実設備へ採用する際は、対象工場の実排水で性能と副産物を確認します。
処理方式を決める試験フロー
- 原水のCOD、SS、pH、色度、流量変動を把握する
- ろ過前後のCODを比較する
- 凝集条件を最適化し、上澄みを採取する
- 凝集上澄みで後段処理の小試験を行う
- 処理水質、汚泥・濃縮水、薬品、電力を比較する
- 連続運転と負荷ピークへの追従性を確認する
よくある質問
Q1. CODが高ければ高分子凝集剤を増やすべきですか?
A. 溶解性CODが主体なら効果は限られます。まずろ過水・上澄みの分析で原因を切り分けます。
Q2. 活性炭を付ければ必ず基準を満たせますか?
A. 対象成分と負荷によります。破過までの期間、交換費用、前処理を実液で確認してください。
Q3. 生物処理にそのまま流せますか?
A. 急な高負荷や阻害成分があれば不安定になります。生分解性、毒性、均等化、栄養バランスの確認が必要です。
Q4. 膜処理なら排水ゼロにできますか?
A. 膜は水と成分を分けますが、濃縮水が残ります。回収率、水質、洗浄、濃縮物処理まで設計してください。
まとめ
水性塗料排水で顔料が取れてもCODが残る主因は、凝集で捕捉しにくい成分と原水変動です。凝集剤を増量する前に、溶解性・粒子性の負荷を切り分け、凝集上澄みを使って後段処理を試験することが、過大設備と運転費の両方を避ける近道です。
CODが下がらない排水の診断相談
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参考資料
- 国土交通省「河川水質試験方法(案)」(2026-08-20確認) https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kasen/suishitsu/pdf/s04.pdf
- A. Ucarほか「Treatment and recycling of highly polluted water-based paint wastewater」(2026-08-20確認) https://doi.org/10.5004/dwt.2011.2111
- E. D. Şengülほか「Microfiltration of water-based paint effluents」(2026-08-20確認) https://doi.org/10.1016/S1093-0191(02)00122-3
- A. K. Körbahtiほか「Treatment of paint manufacturing wastewater by coagulation and electrochemical methods」(2026-08-20確認) https://doi.org/10.1016/j.watres.2016.05.006
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