水性塗料の採用や生産増強に合わせて、排水処理設備を新設・改造したい。しかし、日量と平均CODだけで見積もると、洗浄時のピーク、塗料変更、汚泥処理、再利用要件を取りこぼすおそれがあります。

結論:設備仕様書の前に「水量・水質・変動・出口」をそろえる

水性塗料排水設備の計画では、タンクやポンプの大きさより先に、次の7項目を確認します。

  1. 日量と時間最大水量
  2. COD・SS・pH・色度などの水質
  3. 塗料の種類・樹脂・顔料・添加剤
  4. 色替え・洗浄の頻度と高濃度排水
  5. 放流・下水排除・再利用の要求水質
  6. 既設設備と設置・工事条件
  7. 汚泥・濃縮水と運転体制

1. 日量と時間最大水量

「20m³/日」だけでは設備を決められません。8時間で均等に出るのか、終業時に集中するのかで、調整槽と処理能力は変わります。

  • 稼働日と稼働時間
  • 工程別の発生量
  • 1時間・1回当たりの最大量
  • 将来の生産増加
  • 雨水・生活排水など不要な混入

流量計がない場合は、洗浄容器、ポンプ運転時間、水道使用量などから暫定把握し、設計前に実測します。

2. COD・SS・pH・色度などの水質

平均値だけでなく、通常時、色替え時、初期洗浄時の幅を取ります。

基本項目は、COD、SS、pH、色度、導電率などです。塗料や前処理薬品に金属、有害物質、油分などが関係する場合は、工程情報を基に追加分析します。

SSは凝集・固液分離で除去しやすい成分の目安になりますが、溶解性CODは残る場合があります。原水とろ過水のCOD比較も処理方式選定に有効です。

3. 塗料の種類・樹脂・顔料・添加剤

水性塗料という名称だけでは、凝集性や生分解性は分かりません。次を一覧にします。

  • メーカー、製品名、色番号、月間使用量
  • 樹脂・バインダーの系統
  • 固形分、pH、主要な添加剤情報
  • SDS、技術資料、変更予定
  • 混入する前処理剤・洗浄剤

配合の詳細が非開示でも、実排水の処理試験で設備に必要な情報を補えます。

4. 色替え・洗浄の頻度と高濃度排水

設備トラブルは、平均運転よりピーク時に起きます。

  • 1日の色替え回数
  • ガン、配管、治具、ブースの洗浄方法
  • 初期洗浄水とすすぎ水の量
  • 週末・定期清掃の集中排水
  • 残塗料の回収方法

初期洗浄水を別受けし、定量投入または別処理できれば、本処理設備を過大にせず安定化できる場合があります。

5. 放流・下水排除・再利用の要求水質

処理水の出口は、公共用水域、下水道、回収委託、工程再利用などで異なります。環境省の一般排水基準に加え、自治体の上乗せ規制、下水道排除基準、個別協定、社内管理値を確認します。

再利用する場合は、法令上の放流水質だけでは不十分です。色、臭気、泡、塩類、微生物、製品品質への影響を用途別に決めます。

6. 既設設備と設置・工事条件

改造では、槽容量だけでなく、実際の流れと劣化状態を確認します。

  • 調整、反応、凝集、沈殿、汚泥槽の有効容量
  • 配管ルート、短絡流、越流水位
  • 攪拌機、ポンプ、薬注機、計器の能力
  • 腐食、漏れ、堆積、臭気
  • 電源、給排水、換気、搬入・保守スペース
  • 工事中の仮設処理と生産停止可能時間

図面と現場が一致しないこともあるため、現地調査で寸法と系統を照合します。

7. 汚泥・濃縮水と運転体制

処理水だけでなく、分離した成分の出口を設計します。

  • 汚泥発生量、濃縮、脱水、保管、搬出
  • フィルタープレスの処理サイクル
  • 活性炭・ろ材・膜の交換と洗浄
  • 膜濃縮水、逆洗水、異常水の返送先
  • 運転員、分析頻度、休日・夜間対応
  • 薬品のSDS、保管、漏えい対策

自動化しても、薬品補充、汚泥引き抜き、校正、異常判断は残ります。誰が何分以内に対応するかまで決めます。

設備方式を決める実液試験

水性塗料排水では、まず凝集ジャーテストで粒子状成分の除去性を確認します。上澄みが要求水質を満たさなければ、その上澄みを使って活性炭、生物、酸化、膜などを試験します。

評価項目は次のとおりです。

  • COD・SS・色度・pHの除去
  • 薬品添加量と汚泥量
  • 沈降・浮上・ろ過・脱水性
  • 原水変動時の再現性
  • 電力・交換材・廃棄物を含む運転費

研究論文や他工場の条件は候補選定には役立ちますが、設備設計値には実排水試験と安全率が必要です。

新設・改造の比較でそろえる費用

初期費用だけでなく、10年程度の総保有費を比較します。

  • 機器、槽、電気・計装、配管、基礎、建屋
  • 仮設処理、生産停止、試運転、分析
  • 薬品、電力、汚泥、交換材、保守
  • 運転人員と教育
  • 将来増強と更新スペース

安価な設備でも、原水変動へ対応できず薬品と産廃が増えれば、総コストは高くなります。

相談時に用意するチェックリスト

  • [ ] 日量、時間最大量、稼働時間
  • [ ] 工程図と排水系統図
  • [ ] 通常・洗浄・色替え時の分析値
  • [ ] 塗料・洗浄剤一覧とSDS
  • [ ] 放流・排除基準、社内管理値
  • [ ] 既設設備図面と現場写真
  • [ ] 設置可能面積、高さ、電源
  • [ ] 汚泥量・処分契約・運転記録
  • [ ] 将来生産量と再利用希望

よくある質問

Q1. 分析値がない段階でも相談できますか?
A. 可能です。発生工程と水量を確認し、必要な採水・分析・実液試験を整理します。

Q2. 平均値と最大値のどちらで設計しますか?
A. 槽容量、連続処理能力、別受け運用を組み合わせ、ピークと平均の両方を扱います。

Q3. 凝集沈殿設備だけを先に入れてよいですか?
A. 凝集上澄みが要求水質を満たすか確認してから決めます。後段追加スペースも検討します。

Q4. 既設槽を流用できますか?
A. 容量、材質、劣化、滞留、配管、耐震・安全、工事条件を現地で確認して判断します。

まとめ

水性塗料排水設備は、「日量」と「平均COD」だけでは設計できません。時間最大水量、洗浄ピーク、塗料組成、溶解性COD、排出先、汚泥、運転体制までそろえ、実排水試験で処理フローを確かめることが、過小・過大設備を防ぎます。

水性塗料排水設備の新設・改造相談

参考資料

  • 環境省「排水基準を定める省令」(2026-08-20確認) https://www.env.go.jp/water/impure/haisui.html
  • 環境省「浮遊物質量(SS)の測定方法」(2026-08-20確認) https://www.env.go.jp/kijun/wt_a09.html
  • 日本塗料工業会「Paint Industry in Japan 2024」(2026-08-20確認) https://toryo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2025/03/Paint_Industry_in_Japan2024.pdf
  • A. Ucarほか「Treatment and recycling of highly polluted water-based paint wastewater」(2026-08-20確認) https://doi.org/10.5004/dwt.2011.2111

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